銀河鉄道の夜

ああ、わたくしの
すべてのさいはひを
かけてねがふ。

むかしむかし。バルドラの野原。一匹の蠍（さそり）が小さな虫を食べて暮らしていました。

ある日、蠍はイタチに見つかって食べられそうになります。蠍は逃げますが、目の前の井戸に落ちて溺れはじめました。もうどうしても助かりません。

そのとき蠍はこう言ってお祈りしました。

ああ、私は今まで、いくつもの虫の命を奪っておいて、自分の番になると一生懸命に逃げてこんなことになってしまった。黙ってイタチに喰われてしまえばよかった。そしたらイタチも一日生きのびただろうに…。

ああ神様、どうか次はほんとうのみんなの幸せのために、私の命をお使いください。

その瞬間、蠍の身体は燃えて、空へと浮かんで、蠍は闇を照らす真っ赤な星になりました。

ジョバンニ
家族を支えるために働く少年。学校や職場で疎外され孤独な日々を送る。

カンパネルラ
どこか大人びた少年。ジョバンニの親友だったが、現在は疎遠になっている。

謎の男
ジョバンニへ銀河鉄道の切符を渡した男。お祭の夜にある実験を試みる。

鳥捕り
銀河鉄道の乗客。雁や白鳥などの鳥を捕まえ、お菓子にして売っている。

女の子
大西洋航海中に不幸な事故に遭遇し、弟、家庭教師と銀河鉄道に乗りこむ。

お母さん
ジョバンニの母。病気のため働けずに寝込んでいる。行方不明の夫を待つ。

宮沢賢治（1896〜1933）

岩手県生まれ。盛岡高等農林農学科卒業後、農学校の教師をしながら多くの詩や童話を執筆する。30歳で農耕自炊生活を始め、農民芸術を説く。晩年まで教育・農業・宗教・科学と世界を広げ、創作活動を続けた。その他『春と修羅』、童話『風の又三郎』『注文の多い料理店』等。

関連作品

『ドン・キホーテ』セルバンテス
※奇妙な冒険の旅で手に入れた幸せとは？
『夜間飛行』サン=テグジュペリ
※『星の王子さま』の作者が描くロマンと現実

バラエティ・アートワークス

「まんがで読破」シリーズの制作を目的に設立された著作会社。その他『歴史秘話ヒストリア』『タイムスクープハンター』漫画版および第５期TVドラマ脚本協力(NHK/ピクス)等。2013年解散。現在は後身のTeamバンミカスがシリーズを継続。