被差別部落。中世に起こり、江戸時代に確立した「士農工商」の身分からも排除された人々が暮らす地域。明治後期には廃止された身分制度だが、社会制度が変わっても人々の差別意識は変わらなかった。
その被差別部落に生まれた瀬川丑松は、素性を「隠せ」と父より戒めを受けて育つ。
丑松は小学校教師となり、首座教員として生徒たちに囲まれ、幸せな日々を送っていた。
下宿の蓮華寺で出会った丑松とお志保との恋。その関係に、校長の腰巾着・勝野は嫉妬する。
ある日、何者かによって丑松が被差別部落出身であると噂が流される。父の死。そして丑松がひそかに慕う解放運動家・猪子蓮太郎の死。親友・土屋銀之助からの無意識の差別。
こんなに苦しいのなら、
思想など学ばなければよかった。
人間なんかに生まれてこなければよかった。
追いつめられた丑松は、ついに…破戒する。
瀬川丑松
教師として生徒に囲まれ幸せに暮らしていたが、自らの運命に苦悩する。
お志保
蓮華寺の養女。出身は旧士族。思いやりのある強く美しい女性。
土屋銀之助
丑松の同僚で師範学校時代からの親友。正義感あふれる好青年。
勝野
校長の腰巾着。首座教員の座を狙って、丑松の秘密を探るが…。
猪子蓮太郎
『懺悔録』の著者。差別社会と戦う新しい思想家。丑松のメンター。
阿爺さん
丑松の父。息子の出世を願い、身分を隠して山小屋でひっそり暮らす。
島崎藤村(1872〜1943)
詩人・小説家。学生時代は西洋文学や松尾芭蕉など古典に親しむ。初期はロマン派詩人として『若菜集』等を発表。長野・小諸義塾の英語教師として6年間生活するが、教職を辞し小説家へ転身。自費出版された『破戒』は夏目漱石らの激賞を受け、自然主義文学の旗手として注目された。日本ペンクラブ初代会長。その他『千曲川のスケッチ』『夜明け前』等。
関連作品
『こころ』夏目漱石
※『破戒』を激賞した漱石の代表作
『おくのほそ道』松尾芭蕉
※藤村が愛読していた江戸時代の紀行文
『ヴェニスの商人』シェイクスピア
※差別問題としても語られる16世紀の戯曲
2022.06.25
『破戒』は明治39年、島崎藤村によって書かれた小説です。名前は聞いたことあるけれど、難しそうで読んだことはないという人も多いでしょう。
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バラエティ・アートワークス
「まんがで読破」シリーズの制作を目的に設立された著作会社。その他『歴史秘話ヒストリア』『タイムスクープハンター』漫画版および第5期TVドラマ脚本協力(NHK/ピクス)等。2013年に解散。現在は後身のTeamバンミカスがシリーズを継続。