大阪屋の「久作鍋」夢野久作がハマった博多の文豪メシ

博多石焼 大阪屋の「久作鍋」。大阪屋さんは、福岡県・博多中洲にある老舗料理店です。
博多にあるけど大阪屋。

創業は大正15年、地元の文豪・夢野久作が『ドグラ・マグラ』の執筆を始めた年です。
今回は、夢野久作の大好物だった「久作鍋」をご紹介します。

大阪屋の「久作鍋」ってなに?

「夢野久作が愛したスタミナすき焼きを、久作鍋として再現しました」

大阪屋さんのメニューにはこんな説明があります。夢野久作の短編『山羊髯編輯長』で、主人公がすき焼きを食べた「東中洲の盛り場」のお店は、この大阪屋のことです。

ポケットに残っていた五十銭玉を、東中洲の盛り場で投出して、飯付十五銭の鋤焼(すきやき)を二人前詰込んだ吾輩は、悠々とステッキを振り振り停車場へ引返した。

『山羊髯編輯長』夢野久作

大阪屋の久作鍋は、夢野久作の大好物

当時の大阪屋さんは一人前25銭が相場だったすき焼きを、15銭で提供していました。

夢野久作がハマった、安くて美味しいスタミナすき焼き。週に一度は食べていたそうです。

食の豊かな福岡で生まれ育ち、東京生活の経験もある夢野久作は、エッセイ『街頭から見た新東京の裏面』で、都会の食費について嘆いています。

東京の物価を福岡のソレと比較すると、牛肉が二倍、鶏が三倍、野菜や生魚が二倍半位にも当ろうか。十月から十一月頃、百円の月給では気の利いた下宿にも這入れぬ。

『街頭から見た新東京の裏面』夢野久作

大阪屋の久作鍋は「もつ鍋+すき焼き」のハイブリッド

久作鍋のおもな具材
出典:大阪屋 店内メニューより

大阪屋さんが再現した「久作鍋」の具材は、牛ロース・こんにゃく・じめじ・豆腐など。メニューのイラストをぱっと見た限りでは、普通のすき焼きと変わりません。

しかし、ここは博多。「久作鍋」は定番ソウルフードのアレンジ料理なのです。

博多のソウルフード、鍋料理と言えばニラとニンニクたっぷりの「もつ鍋」です。
もつ鍋の主役は、シマチョウや丸腸などの「モツ肉」ですが、久作鍋ではそれを「牛ロース肉」に変更し、すき焼き味に仕立てます。

博多の文豪メシ・大阪屋の「久作鍋」を実食

久作鍋二人前

久作鍋のランチコース「すきやき御膳」にお肉追加(二人前)で注文してみました。
調理方法は、重ねた具材をグツグツ煮込む「もつ鍋」スタイル。

卵にからめた久作鍋
ごはんに乗せた久作鍋

はい飯テロです(ニチャア…)

もつ鍋のようですが、味付けはもつ鍋よりも濃い、ニンニクが効いた醤油ベースのすき焼き味。たっぷりのニラと卵にからめて、ご飯がすすみます。とまりません。

おひつで提供されたご飯がすぐにカラッポになりました。
当然おひつごとおかわりです。

「久作鍋」を味わってみると、軍隊生活・禅僧・農業・新聞記者などを経て、夢野久作が地元の福岡で満喫していたすき焼きの日々を想像してしまいます…。

食の宝庫で知られる福岡県。
最後に「まだ東京で消耗してるの?」と言わんばかりの、夢野久作からのメッセージをご紹介します。

筆者はだんだんと東京が恐ろしくなって来た。
すくなくとも東京が日本第一の生存競争場である位の事は万々心得て上京した積りであったが、このアンバイで見るとその生存競争があんまり高潮し過ぎて、人間離れ、神様離れした物凄いインチキ競争の世界にまで進化して来ているようである。

『恐ろしい東京』夢野久作

やっぱ地元がサイコーばい!

夢野久作が愛した、博多の文豪メシ「久作鍋」の実食レポートでした。皆様も博多に遊びに行かれた際は、ぜひご賞味ください。

博多石焼 大阪屋
https://www.osakaya-15.com/
福岡県福岡市博多区中洲5-3-16
地下鉄 中洲川端駅から徒歩2分

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